幼き逃亡者

5/77
前へ
/376ページ
次へ
ソラは、その時ハッとしたように桐生に聞いた。 『あの…っ!ぼくのお父さんとお母さんは…?どこにいるの?』 すると、桐生は少し顔を歪めた。そして言いづらそうにソラに告げた。 『…ソラ。残念だけど君のお父さん、お母さんは死んでしまった』 桐生の言った言葉は唐突すぎて、幼いソラには理解出来なかった。 そもそも『死』と言うのがなんなのかと言うのも理解していなかった。 『…しんじゃったってどういうこと?どこかとおくにいっちゃったの?』 『そうだね…ずっと遠いところにね。』 『お父さんとお母さんにあいたいよ…あいにいきたいよ』 『ダメなんだよ、ソラ。遠すぎて行けないんだ』 『やだよーっ!きりゅうさん、そんないじわるいわないでよ!いきたいっ!あいにいくんだぁっ!』 ソラは、興奮して泣き叫んで暴れだした。 両親が死んだことを理解出来たわけではないが、もう会えないということは理解出来てしまったようだった。 桐生は、ソラを宥めながら静かに言った。 『じゃあ、私のところに来なさい。すぐには会えないけど、いつか会えるようになるかもしれないから』 そういうと、ソラはパタリと泣き止んだ。 『本当?』 その目は真っ直ぐ桐生の目を捕らえて離さなかった。 桐生は、ソラを預かるのを納得してもらう為とは言え、嘘をつくことに罪悪感を感じながらも頷いた。
/376ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加