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「おい……、泣いてるのか?」
優しい声だった。それだけではなく、温かい。
私は足が透けていた。それなのに彼は当たり前に私の隣に座って私の顔を覗き込んだ。
あの目―――私を映してくれた漆黒の瞳は私の数年の中で最も印象的であった。
「どうして……? どうして、私が……見えるの……?」
「知らん。だが、見えた」
「端から見たら独り言だよ?」
「……まぁな。だけど、お前は此処に居るじゃないか」
ほんの少しだけ口角が上がる。
分かりにくいけれど、その時、佐波は私に笑いかけてくれた。
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