プロローグ

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『カキーン……』 土のグラウンド全体に響く大きな打球音は、一瞬にして観客たちの目を奪った。 空には、白球がその音に負けないくらい大きな弧を描きながら、雲を引き裂くかのように果てしなく飛んでゆく。 それはまるで、ロケットでも打ち上げたかのような光景だった。 観客の目もそれを追うように空に吸い込まれていった。 「…………」 だが上がりすぎた打球は、いきなり勢いを失った鳥のように失速し、かと思えば今度は急激に下に落下してくる。 誰もが思った。 『思ったほど伸びない……』 そのまま打球はセンター側に落ちてくる。 それは入るか入らないかという絶妙な飛距離だった。
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