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       「早く言えば楽になる。   素直に言ってしまえ」  私は、見張り役と言う形で  少しだが彼…青年に  関わっていた。  青年は、精神的にも  もう、何もかもが  ボロボロだった。  「僕はやってない…」  青年は、壊れたラジオの様に  何度も…何度も言った。  「もう疲れた。また明日に   するとしよう」  今の今まで青年を殴る事しか  していなかった上司が  そう言った。  「お前は一晩、こいつを   見張っておけ」  「はい」  上司を出て行く姿を見送って  から、私は彼に近付いた。  電気を消された部屋では  彼の姿を捉えるのが  精一杯だった。  「君は…本当にやって   いないのだろう?アリバイ   だってちゃんとあるだろう   に、なんでそれを…」  私の言葉に彼は虚ろな瞳の  まま、声を震わせながら  小さく呟いた。  「それでも僕はやって   ない…」  私は、彼の言葉に  涙を浮かべた。  彼の乾いた涙を握り締め、  孤独から生きる気力までもを  無くしてしまった姿に…。  心が泣いた。  何がここまで彼を  壊してしまったんだ?  真の正義を見つけ様と  している私達か?  それとも……… .
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