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       何人かの者が見守る中、  彼はロープを手に取った。  「っ……」  私は溢れる涙を堪え、  彼を見た。  彼がロープを首に掛けた時、  小さく呟いた。  「それでも僕は   やってない…」  彼が死に際に放った最後の  言葉だった。  私は涙を堪え切る事が  出来なかった。  その場に座り込み、  子供の様に泣いた。  ここまで泣いたのは、もう  何十年振りだっただろうか。  私は青年の命の為だけに  涙を流した。  だがそれは決して  無駄なものじゃなかった。  「神よ…これがあなたの   答えですか…」  私の問いに誰かが言った。  「神など存在しない…」  天使も悪魔も。  何も縋れるものなど無い。  「本当の正義とは何?」  虚しく響いた私の声に  誰も声を発しなかった。  たとえば…  神がいたとしても、もう  彼の痛みは消えない。                               END
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