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~20年前~
「…ん」
母親が料理をしている音で晋助は目が覚めた。
もう朝か…
晋助は起きて、二階の寝室から下にある居間へ寝巻のまま下りていく。
居間へ行くと母のサエが朝食の用意をしていた。
晋助に気がつくと、笑顔でおはようと挨拶をした。
晋助は今だ眠い目をこすりながら挨拶を返した。
あたりを見ても父の姿が見えない。
「…父さんは?」
返ってくる答えは予想できる。
「朝早く出かけたよ。今日も帰ってくるのは遅くなりそうね。」
やっぱり。
だが、そんなことはハッキリ言ってどうでもよかった。
父親は仕事でいつも帰りが遅く、一緒に遊んだ記憶もない。
朝食を食べ終えると、晋助はすることもないので、庭で洗濯物を干している母の様子を眺めていた。
山のような洗濯物。
忙しそうに動き回るサエに「手伝おうか?」と尋ねた。
するとサエは笑顔で
「大丈夫だよ。夕方までお志乃ちゃんのところに行って遊んでおいで。」
と言った。
それを聞くと晋助は寝巻から着替えて出かけて行った。
サエは笑顔で見送った。
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