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調布亞恋(ちょうふ あこ)は、昔からとても人見知りが激しかった。
いつもいつも、兄を追いかけてきては、袖を引っ張り、背中に隠れている。
そのせいか、「服の袖がすぐに伸びてしまう」と、母からは口癖のように怒られてた。
そんな彼女は例えるなら、レベル100の勇者の背後で隠れている遊び人。兄が幾ばくの苦難を抱える中、背後から高みの見物を決め込んでいた。
まあ、そんなことで対人経験値が上がるはずもなく。
中学に入る頃には、人見知りは癌となり、クラスメートとすら話せない、内気な子となってしまっていた。
「大丈夫です、亞恋には、兄さんがいれば十分ですから」と、便利な道具のように扱われているが、これでよいはずもない。
妹をどうやって、世間へと順応させるか、それだけが兄の心配の火種だった。
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