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「ヒーローって、信じますか?」
「はい?」
亞恋に突然問われて、兄はよく分からなかった。分かったのは「こんなに高い声を、自分は出せるのか」ということくらいだ。
「ヒーロー、というのは、あのヒーローですよね?」
黎明は、特撮映画に出てくる、あのヒーローを思い浮かべる。
「えぇ。亞恋みたいな可愛い子がピンチになると助けに来てくれる、ロリコンという名の変態紳士です」
「すいません、亞恋さんの説明から推測すると、一難去ってまた一難という状況ではありませんかね?」
「変態でも紳士ですから」
「そうですか。一厘も納得してませんけど分かりました」
「それで、兄さんは、信じますか?ヒーローって」
「さぁ。なにぶん、会ったことがありませんから‥‥」
「そうですか。なら、亞恋の勝ちです」
「はい?」
すると、妹はしたり顔で兄を見下した。
「亞恋は、ありますよ。ヒーローに会ったことが」
黎明と亞恋が、何気なく交わした会話だった。
遠い遠い昔にした、他愛もない雑談だった。
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