妹は兄の寛容さにつけ込んで、無理難題を押し付けちゃうんです

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    *  *  * 「ヒーローって、信じますか?」 「はい?」 亞恋に突然問われて、兄はよく分からなかった。分かったのは「こんなに高い声を、自分は出せるのか」ということくらいだ。 「ヒーロー、というのは、あのヒーローですよね?」 黎明は、特撮映画に出てくる、あのヒーローを思い浮かべる。 「えぇ。亞恋みたいな可愛い子がピンチになると助けに来てくれる、ロリコンという名の変態紳士です」 「すいません、亞恋さんの説明から推測すると、一難去ってまた一難という状況ではありませんかね?」 「変態でも紳士ですから」 「そうですか。一厘も納得してませんけど分かりました」 「それで、兄さんは、信じますか?ヒーローって」 「さぁ。なにぶん、会ったことがありませんから‥‥」 「そうですか。なら、亞恋の勝ちです」 「はい?」 すると、妹はしたり顔で兄を見下した。 「亞恋は、ありますよ。ヒーローに会ったことが」 黎明と亞恋が、何気なく交わした会話だった。 遠い遠い昔にした、他愛もない雑談だった。
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