サザンクロス~情報屋とコウノトリ~

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――嫌な感じ……ね。 ヘンリーもそれは少なからず感じとっていた。 なんともいえない、微妙な変化……。 例えば――あの女。 ――ネッサローズ。 ここに来た当初より、はるかに打ち解けてはいるが……。何か彼女から底知れない……暗いものを感じる。 言葉では言い表せない何か……。 トトもきっと感じとっているのだろう。 だから、少し苛立ち……ホグを怯えさせる。 見えない何かが、俺達を飲み込もうとしているのか……? そこまで考えて、ヘンリーはふっと笑った。 「……変わらないのは、ドロシーだけか?」 どんな時でも、彼女は彼女のままで。 永遠に不変なるもの。 「……だから愛しくて、守りたいんです」 エムがヘンリーの思いに呼応する。 「……だな」 どうか、彼女だけは変わらないで欲しい。 そのためなら、何を犠牲にしてもかまわない。 それが“男”としての思いからくるものなのか“父親”としての思いからくるものなのか、よくわからないけれど……。
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