サザンクロス~情報屋とコウノトリ Vol.2~

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私も一緒に車から降りる。 「ここらへんから、人が多くなります。車より歩いて行ったほうが早い」 時刻は、夕刻に近い頃。 カドリングが一番活気づく時間が迫ってきている。 色とりどりのドレスを着た女性達。軍服を着崩し、大笑いしながら歩いていく若い兵士達。客の呼び込みをするスーツ姿の男やマンチキン――。 カドリングは異様な熱気に包まれていく。 「さて……じゃ、行きますか。……はい」 トトが手を差し出した。 「……はい?」 差し出された手をじっと見つめる。 「“はい?”じゃありませんよ。手をつないで行くんですよ」 「なんで!?」 意外なことを言われて、つい声が裏返る。 「はぐれたら困るでしょう?」 「だ、大丈夫よっ! 子供じゃないんだから」 「ダメです。お嬢はどこに行くかわかったもんじゃない」 うう……。信用ないなぁ……。 「それとも、お嬢……」 意味深にトトが笑う。 「さっきのことで……意識してるとか?」 「なっ……!? するわけないでしょう!? そんなの!?」
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