サザンクロス~情報屋とコウノトリ Vol.2~

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また、顔が真っ赤になりそうだ。 「~~~~っ! わかったわよっ! 手、握ればいいんでしょ!」 強引にトトの手をとる。 「はい」 満足そうにクスクスと笑うトトが憎らしい。 手をつないだ私達は、人の波の中を歩き出した。 たくさんの人、人、人。 確かにトトの言うとおり、手をつないでいないと、はぐれてしまいそうだ。 ――でも。 私、さっきから、心臓バクバクしっぱなしなんですけど!? なんで!? どうして!? なぜなにホワイ!? トトとはいつだって一緒にいるのに。 何かが変だ。トトも私も。 「……懐かしいですね」 一人悶々と悩んでいたら、トトが突然、ポツリと呟いた。 「え?」 人混みの中、消えてしまいそうなトトの声。 「昔は……お嬢とこうやって手をつないで、二人で診療所に帰りましたよね」 ……ああ。そうか。 なぜか、わかった。 トトと私が変なワケ……。 トトと長い時間……こうやって、二人だけで過ごすのが……本当に久しぶりなんだ。
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