サザンクロス~情報屋とコウノトリ Vol.2~

7/38
前へ
/604ページ
次へ
「……昔はよく、お嬢家出してましたもんね」 「……うん」 ――お父さんがいなくなってから、私はよく家出していた。 虹の向こう側の“オズ”に行くと言っていたお父さん……。 もしかしたら、お父さんが帰ってくるんじゃないかと思って、迎えに行くんだと言って、その度トトが連れ戻しにきたっけ……。 「家出する度、オヤジのやつパニックになって……エムさんがそれをなだめて……俺が探しに行って……」 黙ってトトの話を聞く。 「……で、俺が連れ戻したあと、オヤジのやつお嬢を怒ろうとするんだけど……お嬢、決まって泣いていて」 「……帰りのあんたの説教がしつこかったから」 「で、結局、俺が怒られるんですよ。“何泣かせてんだ!”……って」   トトがおかしそうに笑う。 「……なんか、理不尽だって思いましたよ。あれは」 「……ごめん」 思わず、トトに謝る。 「いつからでしょうね。お嬢が泣かなくなったのは……」 「……」 いつからだろうか? 私は泣かなくなった。
/604ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1279人が本棚に入れています
本棚に追加