サザンクロス~情報屋とコウノトリ Vol.2~

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「誰かに聞いてみた方がよさそうですね……。お嬢、ちょっとだけここで待っていてください」 そう言いながら、トトが手を離した。 「絶対ここから動かないでくださいよ。誰かに声かけられてもついて行ったらダメですよ。お菓子あげるって言われてもダメですからね」 ……子供か。私は。 「大丈夫よ。ここで座って待ってるから」 店の横にあるベンチに腰掛ける。 「すぐ戻ります」 人混みの中に、トトが入って行った。 ベンチから、行き交うたくさんの人達を眺めながら、ぼんやりといろんなことを考える。 ……トトが変なことばっか言うから、悪いのよ。 暑くなりそうな顔をぱたぱたと手で仰ぐ。 環境が変わると、些細なことが気になるっていうか……いつもと違うから、調子狂うのよね……って、誰に何を言い訳してんだ? 私は? そんなことを考えていた時…… 「てめぇっ! ざけんじゃねぇぞっ!!」 前からものすごい怒鳴り声が聞こえてきた。 そして、悲鳴。 見ると人だかりが出来ている。
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