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人だかりから、会話が漏れ聞こえる。
“またあいつら”“気の毒なやつ”“寄って集って”“ぼこぼこにされるぞ”
そして、人だかりの向こう側から言い争う声。
「てめぇっ!! 俺の女に手ぇ出してただで済むと思ってんのか!? ああ!?」
「知らねぇっつうの。だいたい、そっちのお姉ちゃんからモーションかけてきたんじゃねぇか。それを人のせいにするってどうよ?」
ドスの効いた怒鳴り声とチャラっという感じの気のない返事。
……気になる。
でもここで顔を突っ込んだら、十中八九トトから説教くらうのは間違いない。
だけど……やっぱ気になるから……少しだけ。見るだけなら……。
ごめんね。トト。
好奇心には勝てませんでした。
そっと人だかりに近づき、ひょいっと中に入る。
人だかりの輪の真ん中で、軍服を着崩したガラの悪そうな男が、いかにもホストですという感じの男の胸ぐらをつかんで凄んでいた。
「違うわっ! この男が最初に私に言い寄ってきたのよっ! 私は嫌がってたのに、この男が無理やりっ!!」
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