1279人が本棚に入れています
本棚に追加
薄暗い店内。
男とも女ともとれる不思議な歌声。
ステージの上、グリンダがスポットライトの下で歌っている。
懐かしい童謡を口ずさむように歌うグリンダ。
私とトトは、それを奥のボックス席で静かに聞いていた。
他のお客も、グリンダの歌に聴き入っている。
ピアノが止み、グリンダの歌が終わった。ステージの上で優雅にお辞儀をするグリンダ。
われんばかりの拍手が起こった。
その中を微笑みながら、グリンダは優雅に歩く。
一人一人に微笑みかけ、ときには握手しながら、私達の方へやって来た。
「グリンダ! すごく素敵だったよ!」
私は拍手をしながら、グリンダにそう言った。
「どういたしまして。あんた達がいるもんだから、気合い入れて歌っちゃった」
ふふっとグリンダが笑う。
「あの歌って、童謡だよね? こういうところで聴くと、またちょっと違うよね」
グリンダにそう言った。
「そう。世界を創る少年と少女のお話。私の好きな歌……」
なぜか、寂しそうにグリンダが微笑んだ。
最初のコメントを投稿しよう!