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「知ってる? あの歌はホントにあったことを歌っているんだって」
グリンダが私の側に来て、頬に手をあてた。
ドキッとして、身を引こうとしたが、できなかった。
グリンダの眼差しが、切なげで寂しそうだったから……。
「ううん。もしかしたら、今でも続いているのかもしれないわ。この世界のどこかで、少年と少女は互いに、永遠に聴こえない愛の詩を口ずさんでいるのかもしれない……」
切なげに揺れるグリンダの瞳を見ながら、私は頬に当てられたグリンダの手をとった。
「……そんなことない。詩はきっと届くわ。お互いが聴こえない愛の詩はいつかきっと届く」
グリンダの手を握る。
「今は届いてなくても、必ず届く。ううん。届けてみせる。だって……私は……」
……そのために“この世界”にいるのだから。
私は“ここ”にいるから……。
どうか、愛し君よ。泣かないで。
あなたの嘆きで……この世界を終わらせないで。
思い出して。生きとし生けるものを愛し、私の創る詩を高らかに歌っていたあの頃を……。
どうか……お願い。
愛し君よ……。
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