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トトが苦笑する。
どこか煮え切らないようなトトに、オールボーンは少し苛立った。
「……独占したい気持ちはわからんでもないがな。“ごっこ遊び”はほどほどにしておけ」
瞬間、トトから笑顔が消えた。オールボーンを睨むように見つめ、そして笑顔になる。
「はは……。かなわないな……。“先生”には」
昔の呼び方でオールボーンにそう言って、トトは背を向けて歩きだした。
――そう。トトがドロシーを毎朝起こすのは、彼女を独占したいから。ほんの少しの時間だけど、その間だけ昔から築いてきた“二人だけの時間”が共有出来る。
――そしてドロシーもまた、無意識のうちに“二人だけの時間”に身を委ねている。
――その間だけ“あの頃”に戻れるから。
……少し言い過ぎたな。
オールボーンは再びため息をついた。
……何を剥きになってんだ? 僕は。
……嫉妬?
オールボーンは自嘲気味に笑う。
オールボーンが知らない、ドロシーとトト。決して、自分が入ることのできない二人だけの領域……。
……僕も人のことは、言えないかもなぁ~。
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