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グリンダが用意してくれた宿に、お嬢を先に行かせ、俺はグリンダと話をしていた。
「……グリンダさん。あまりお嬢の心を引っ掻き回さないでくれませんか?」
「あら? なんのことかしら?」
ソファーの上で足を組み、優雅に微笑むその姿に、俺の苛立ちが限界を越えた。
「惚けるなっ! “あの歌”をお嬢の前で歌ったり、記憶を呼び覚ますようなことを言ったり、わざとお嬢が不安になるような情報を与えたり……やめてくれっ!!」
気が付くと、グリンダの胸ぐらを掴んでいた。
「……怖い?」
「え?」
ふいにグリンダから問いかけられ、思わず胸元から手を放す。
「あの子が変わってしまうのが怖い?」
グリンダが俺を見据える。
「俺は……お嬢に、もう二度と悲しい思いをさせたくないだけだ」
フィエロ博士がいなくなってから、父親を思い一人で泣いていた彼女。
何度も迎えに行くと言って、家を飛び出していた彼女。
そんな彼女に俺はなにもしてやれなくて……。
挙げ句のはてに……“あれ”は起こった……。
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