サザンクロス~情報屋とコウノトリ Vol.3~

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持ち出された“アガートラーム”。 返り血を浴びた彼女。 何も移さない虚ろな瞳。 全てを象徴するかのような、燃えるような夕陽と赤い虹。 胸に痛みが走る。 “あの日”からだ。お嬢が泣かなくなったのは。 ……俺はあの時、何も出来なかった。何もしてやれなかった。無力な自分が悔しくて。悲しくて。 ――あの子を守ってやってほしい。来るべきその日まで……。 フィエロ博士との約束。 ――お前には生きる意味がある。 フィエロ博士だけが“俺”という無価値な存在に価値をくれた。 それが――彼女。ドロシー=ゲイル。俺の……唯一無二のお嬢。 今度こそ守りたい。 二度と彼女をあんな姿にはさせない。 彼女に降り掛かる全ての災厄は俺が払う。 それだけが……俺の生きる意味。 「……苦しそうで……哀しそうで……見てられないわね」 グリンダが呟く。 「あの子に悲しい思いをさせたくない? 悲しいのはあんたでしょう? あの子が変わってしまったら……自分から離れて行ってしまうかもしれない。それを考えると怖くて悲しくて……たまらないんでしょう?」
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