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グリンダが俺の手首を掴んだ。
「……っ!」
手首に走る痛み。
グリンダの鋭い眼光が俺を射ぬく。
「……お前や……ヘンリーの気持ちはわからないでもない」
そして鋭い“男”の声。
「あの子と一緒にいると、この俺ですら、使命を忘れてしまいたくなる。世界のことなんてどうでもいいという気にさせられる」
かつて……グリンダは“オズ”に……“軍”にいたと聞いたことがある。
そのグリンダのもうひとつの顔がかいま見えた。
「……だが、それでは駄目なんだ。この壊れた世界を修復し、再生させられるのはあの子しかいない。そしてそれは、あの子のうちに眠るあの子自身も恐らく望んでいる。だから、フィエロ博士はあの子をお前達に託した! この狂った世界に終止符を打つことを願いながら……! そして、再生された世界で、お前達と穏やかに暮らせる日を夢見ながら……!」
険しい……だけど、どこかつらそうなグリンダの顔。
「お前達は、フィエロ博士のそんな思いを無にするのか!? あの子を守ると称してこの世界を見捨てるのか!?」
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