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俺の手首を掴んでいるグリンダの腕を強く払いのける。
「……俺に“生きる意味”を与えてくれたのは……フィエロ博士だ。……感謝しつくしてもしきれない」
けれど……
「俺にこの世界で生きたいと……“願い”をくれたのは“今のお嬢”なんだ」
グリンダを強く見据える。
「だから……もしも、この壊れた世界がお嬢を必要としていて……でも“今のお嬢”はいらないというなら……世界なんて壊れたままでいい」
お嬢のいない世界なんて意味がない。
そんな世界は一片の価値もない。
「たとえ、お嬢が世界の再生を望んだとしても、お嬢がこの狂った世界の贄になる必要はない。お嬢を犠牲にしないと存続できない世界なんていらない」
ならばいっそ……
「そんな世界は滅びればいい。全てが無に帰した世界で俺とお嬢の二人だけなんて……息が止まる程の幸せだよ」
グリンダの耳元でそう囁く。
グリンダは微動だにせず、視線だけを俺の方に向ける。
「……あんた、背筋にくるようないい笑顔してくれるわね。今のはちょっとキタわよ」
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