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グリンダこそ、ぞくりとするような笑顔を返す。
「あの子も大変な男に好かれたもんね……」
「……なんとでも」
これ以上話すことはないとばかりに、グリンダから離れ、ドアの方に向かう。
「お待ち」
グリンダが俺の背中に声をかける。
「あんたが……いえ、あんたとヘンリーがおのれのエゴであの子を守りたいように……あたしは、この世界を変えたいの。たとえどんな犠牲を払ってでもね」
振り返った俺とグリンダの視線が絡みあう。
「それが……“オズ”を……“家名”を捨てたあたしが唯一できる贖罪だから……」
いつか……
「俺とあんたは……敵対するかもしれないな」
世界を失ってでも守りたいものがある俺と……かけがえのないものを失ってでも、世界を再生させたいグリンダ。
似て非なる……願い。
「……そうならないことを祈りたいわね」
グリンダの呟きに、背を向け俺は部屋から出て行った。
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