1279人が本棚に入れています
本棚に追加
いいも悪いも……トトは私を抱く腕を緩めようとはしない。
「あの……トト……?」
「俺が落ち着くまで……少しだけですから……」
それまでこうやって、ドアの前の床で抱かれてろと……?
そう言いたかったが、トトの切なげで苦しそうな顔を見たら、何も言えなかった。
「……すいません。俺はおかしいんです。狂ってるのかもしれない……」
トトの苦しそうな囁き。
「……お嬢。どうかお願いです。俺から離れないで……いつまでも変わらないで……ずっとずっと俺のお嬢でいてください」
祈るような声。
「お嬢がお嬢でなくなったら……俺は……!」
「大丈夫」
トトの頭に手を当て、髪を撫で上げる。
「大丈夫。私がトトから離れるわけないじゃない。だって……トトは私が嫌だって言っても私にくっついてるんでしょう? どうやって離れられるのよ?」
昔交わした約束を口にする。
「……ああ。そうでしたね。俺はお嬢が嫌だって言っても側にいるって……」
トトの体が震える。
「だけど……それでも……お嬢。約束してほしい。俺を置いていかないで……」
最初のコメントを投稿しよう!