サザンクロス~情報屋とコウノトリ Vol.3~

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暗い部屋に、月の明かりだけが優しく降注ぐ。 その中で繰り返し聞こえる祈りの声―― どうか……お願いだから……どうか……どうか…… 「大丈夫……大丈夫だから……」 聞きたいことはたくさんあるはずなのに、それしか言えなくて……。 子供をあやすように、背中をさする。 ――これじゃ、いつかの逆だわ。 そんなことを考えながら、歌を口ずさむ。 それはグリンダが歌っていたあの童謡。 どこか懐かしくて、哀しいあの歌――。 遥か昔……誰かが、私達に歌ってくれた歌……。 「エル……ファバ……博士……」 トトがかすかに呟いたその名前に「おかあさん」と私が小さく答える。 トトの頬につたうひとすじの涙。 月明かりの下、静かな夜に私の歌声が吸い込まれ……トトと私を包み込んでいった……。
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