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「お~ま~え~なぁ~」
コウノトリが後部座席からはい上がるようにして何かを訴えてきたが、気にしない。
「フォロー、よろしくね」
満面の笑みを浮かべ、コウノトリを見る。
そんなやりとりを見ていたトトが、口を挟んだ。
「……なんだかよくわかりませんが……まぁ、良いです。車からナビしてもらうと助かりますし。よろしくお願いします。コウノさん」
「コウノさんって……名字みたいに言うな」
そう突っ込むコウノトリを尻目に、私は別のことを考えていた。
よっしゃ!!
トトのやつ、説教のことがどこかに行きかけてるっ!!
心の中でガッツポーズをとる。
「ん~。ナビ言うてもなぁ~。この集落を通り抜けたら、あとはほぼ真っ直ぐやからなぁ~」
コウノトリが、私とトトの間から顔を覗かせ、そう呟いた。
私達を乗せた車は、順調に進んでいく。
急に視界が開けた。
「うっわぁ……!」
思わず感嘆の声をあげる。
それは一面の麦畑。
どこまでも続く黄金の海。
風が吹くたび、波打つ稲穂。
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