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抜けるような青空に雲の影が行き交う。
「さすが……有名な農業地区なだけありますね……」
トトも感嘆の声をあげる。
「せやろ? けどな、ここにある作物の大半は中央に……“オズ”にもっていかれてしまうねん」
コウノトリの真剣な声に、思わず振り返る。
「アホらしい話や。自分たちで一生懸命作ったもんをもっていかれて、自分たちの手に出来る食いもんはちょびっとや。なんのために作っとるのかわからへん」
“オズ”による配給制度のことを言っているのだろう。
公平さを期すためと“オズ”は説明しているが、実際は、中央にいる人間達がほとんど独占している状態だと義父さんが言っていた。
私達が手にする食べ物は、必要最低限のもの。
だから、足元を見る悪辣な商売人や闇商人があとを断たないのだと――。
「そんなアホみたいな世界がイヤで仕方のうて、なんとかせなーって、頑張ってみたけどな……取っ捕まってこのざまや」
コウノトリが自嘲気味に笑う。
“マンチキン”になるにはそれなりの理由がある。
例えば犯罪者――。
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