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「……“車で地図を見る時は10分置きに景色を見る”……忘れてた」
「忘れるなっ!!」
アルがポンポン突っ込む。
「……休憩ですね」
トトがそう言った。
「……だな。あそこの岩場まで移動しよう。先生、それまでこらえてくれよ~」
「……大丈夫だ。あと1時間……」
「それはもうええっちゅうねん!!」
レオンが荷台から飛び降りた。
「……レオン?」
「……見てくる。すぐ戻る」
そう言って、レオンは岩場の方に移動した。
危険がないか、調べるつもりらしい。
トトもジープから降りた。
そして、黙って彼方の“虹”を見ていた。
――虹は嫌い。虹が出るたび、失ったモノはかえってこないと思い知るから。
トトの背中を見つめながら、ドロシーがそう呟く。
――俺も虹が嫌いです。虹を見るたび思い知る。自分の無力さを。何もできなかった自分に腹が立つ。
いつだったか、トトがそう言ったことがある。
“あの日”も虹が出てたね。
トトの背中にもう一度語りかけ、ドロシーは彼方の虹を見つめた……。
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