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夢を見ていた。
幼い頃の……。
――おとうさん、どこいくの?
――ドロシー。起きてたのか?
――ねえ、どこいくの?
――どこも行かないよ。
お父さんが笑って、頭を撫でる。
――うそ! ドロシーは知ってるのよ! おとうさんがドロシーとトトをおいて、どっかにいっちゃうって! 昨日、ヘンリーおじさんにそう言ってたの、ドロシー、知ってるんだから!!
――……ドロシー。
――いかないで! おとうさん! ドロシーをおいていかないで!
お父さんの服を掴んで、握りしめる。
――ドロシー。聞いてくれ。
お父さんが私を抱きしめた。
――お父さんはこれから、虹の向こうの“オズ”に行く。
――“オズ”?
――ああ。そして“お母さん”の話をしてくる。
――おかあさん? ドロシーのおかあさん?
――そうだ。お父さんとお母さん、トトとドロシーが一緒にいてもいいか聞いてくる。
――じゃあ、ドロシーもいく。おとうさんといっしょに“オズ”にいく。だから……。
……置いていかないでよ。お父さん。
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