虹の向こうに~望郷~

2/9

1279人が本棚に入れています
本棚に追加
/604ページ
夢を見ていた。 幼い頃の……。 ――おとうさん、どこいくの? ――ドロシー。起きてたのか? ――ねえ、どこいくの? ――どこも行かないよ。 お父さんが笑って、頭を撫でる。 ――うそ! ドロシーは知ってるのよ! おとうさんがドロシーとトトをおいて、どっかにいっちゃうって! 昨日、ヘンリーおじさんにそう言ってたの、ドロシー、知ってるんだから!! ――……ドロシー。 ――いかないで! おとうさん! ドロシーをおいていかないで! お父さんの服を掴んで、握りしめる。 ――ドロシー。聞いてくれ。 お父さんが私を抱きしめた。 ――お父さんはこれから、虹の向こうの“オズ”に行く。 ――“オズ”? ――ああ。そして“お母さん”の話をしてくる。 ――おかあさん? ドロシーのおかあさん? ――そうだ。お父さんとお母さん、トトとドロシーが一緒にいてもいいか聞いてくる。 ――じゃあ、ドロシーもいく。おとうさんといっしょに“オズ”にいく。だから……。 ……置いていかないでよ。お父さん。
/604ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1279人が本棚に入れています
本棚に追加