虹の向こうに~望郷~

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「ヘンリー様。こちら“軍”からのテレックスです。確認、お願いします」 ……さすが、エム。義父さんの有能美人秘書兼助手。なかったことにしましょう&スルーで、強引に本題にもっていく気だわ……。 「……ったく」 義父さんが、エムから書類を受け取り、読み始めた。みるみる、義父さんの眉間にシワが寄り、険しい顔になる。 「……ちっ。またかよ。あいつらは……。なんでも許されるとでも思ってるのかよ……」 不機嫌そうに毒づく。 「おい。バカ息子。一緒に来い」 「……はいはい。今日は何ですか? 雑用ですか? それとも護衛?」 「弾除け」 「このクソオヤジッ」 「“軍”のやつら、また、民間人に発砲しやがった。テロだかスパイだか難癖つけてな」 「……で、どうせいなかったんでしょう。テロもスパイも」 トトが皮肉っぽく笑う。 「ああ。だが、死者と怪我人が大勢出た。……そいつらをなんとかしろだとよ」 「ひどい……!」 思わず呟く。 「だよな。だが、放っておくわけにもいくまい。噂を聞きつけて、血の気の多いやつらが報復に来る可能性も大だ。だから……」
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