虹の向こうに~望郷 Vol.2~

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――ああ。お父さんが“ドロシーとトトのお父さんになってくれ”ってヘンリーおじさんに頼んだんだ。だから、ドロシーは一人じゃないし、ヘンリーおじさんっていうお父さんもいる。 お父さんが私を強く抱きしめる。お父さんは……泣いていた。 ――ごめん。本当に……ごめん、ドロシー。……俺は……俺自身で……お前たちを幸せにしてやりたかった。トトも……お前も……“エルファバ”も。……でも……出来なくて……! ――お父さん? ――ドロシー。これをお前に。トトにも同じものを渡してある。 お父さんが懐から出したもの……それは、美しく輝く“銀の銃”。 ――“アガー・トラーム”って言うんだ。……ドロシーが大きくなって……自分で何もかも決められるようになって、それでもお父さんが帰って来なかったら……“それ”をもって、“オズ”に来てもいい。 お父さんが頭を優しく撫でる。 ――……ドロシー。……お前は……虹の向こうの“オズ”を目指すのかな……?“エルファバ”のように、運命に挑もうと、戦おうとするんだろうか? お父さんが愛しそうに私の頬を撫でる手が、暖かかった……。
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