虹の向こうに~望郷 Vol.2~

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 ※ ※ ※ ※ ※ 義父さんとトトが“軍”の要請で家を開けて3日目の夜―― 外から車が止まる音と声が聞こえてきた。 「どうやら、ヘンリー様達が戻られたようですね」 一緒に食事の準備をしていたエムが、窓の外を覗きながら、そう言った。 「そうなの? シチュー、足りるかな?」 「足りなかったら、缶詰めを開けましょう」 エムが微笑みながら、そう答えた。 ……えっと……缶詰め? 「連絡ひとつよこさないヘンリー様達がいけません」 私の心の中を見透かすように、エムが更に答えた。 ……義父さん達が、缶詰めなのね……。 玄関ホールから、あわただし気な人の気配がする。 あわてて、玄関の方へ行くと、義父さん達がいた。 いや……正確には、義父さんと他の誰か。 義父さんは、小さな男の子を抱き抱えていた。 男の子の顔色は蒼白で、荒い息をしている。 よく見ると、腕と胸の辺りに包帯が巻かれており、血が滲んでいる。 「義父さん!? その子、どうしたの!?」 驚いて、義父さんに駆け寄る。 「……えーっと、話せば長くなるんだが……」 義父さんが困ったように、苦笑した。
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