虹の向こうに~望郷 Vol.2~

9/14
前へ
/604ページ
次へ
「さっきから聞いてれば、関係ないことばかりっ!! ふざけるなっ!! 早くあたしの子を治療しろっ!!」 女性が激高して怒鳴り散らす。 「……応急措置はしてる。傷も見た目ほど深くなかったし、急所もハズレてた。道々、そう説明しただろう」 義父さんが、静かにそう言う。 「むしろ、問題は他にある。……お前さん、この子に相当“無茶”をしただろう?」 「……っ!」 「……気付いてなかったとでも思ったか?……医者をなめんな」 義父さん……。怒ってる。 「……仕方なかったのよ。痛がって……泣くから。“軍”に見つかったら……」 「……ふん。素人判断で、アヘンなんて使うもんじゃねぇよ。……まぁ、いい。俺も腐っても医者だ。なんとかしてやる。……それから、さっさと銃をおろせ。そんなもん振り回さなくても、俺はちゃんと治療してやるよ」 「……そんなこと、信用できるかっ!」 義父さんが、ため息をついた。 「……医者としていう。銃をおろせ。あんたも体力が限界のはず。治療と休息が必要だ」 「はっ! 大きな世話だっ!」
/604ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1279人が本棚に入れています
本棚に追加