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――あの集落に、レジスタンスやテロリストはいないはずだったんですがね……。
気を失った女性の手当てをしながら、トトが事の顛末を話し出した。
※ ※ ※
「ひでぇ現場だったな……」
疲れ果て、車の後部座席に横たわるヘンリーが煙草に火を点けようと、懐を探っていた。
「ダメですよ。車は禁煙です」
車を運転しているトトが、バックミラー越しに話しかけてきた。
「堅ぇこというな。吸わねぇとやってらんねぇ気分なんだよ」
「知りませんからね。エムさんから“車がヤニ臭い”って怒られても」
何も答えずに煙草に火を点けるヘンリー。
トトもそれ以上は何も言わなかった。
……それにしても、ひどい現場だった。
ヘンリーは先ほどまで対応に追われていた、“軍”が襲撃した村のことを思う。
“軍”の言い分はこうだ。
“村にレジスタンスの一味の隠れ家があるという情報を掴んだ。しかし村人達がこれを否定。捜索の妨害と阻止をしたため、“オズ”に反逆の意志ありと見なし、やむなく粛正を断行”
ヘンリーは、ふんっと鼻で笑った。
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