虹の向こうに~望郷 Vol.3~

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そんな“オズ”に対抗する人々もいるにはいる。 が、そんな奴らに“オズ”が容赦するはずもなく、結果として更に“オズ”の恐怖政治と独裁は強まり、泥沼を招いている。 ……暗くなってきたな。 ヘンリーは少しずつ沈む夕陽を眺め、トトに声をかけた。 「……トト。悪かったな」 「……いきなり何ですか? 気持ち悪い」 「いや……お前もほとんど休んでないのに、運転までさせちまってるし、……それにあの時……止めてくれただろう。俺を」 ああ、とトトが言った。 あの時――あまりのことに我を忘れかけたヘンリーが“軍”にくってかかろうとした時、トトが言ったのだ。 “起こったことを責める前に、まず救える命を探しましょう。あなたは医者なんでしょう? 医者の義務と使命を果たすべきです。文句を言うのはその後です” 「……言ってもどうしようもないって、頭じゃわかってるんだがな。言ったところで、“軍”の不興を買うだけだしな」 「ホントですよ。へたしたら、俺達が蜂の巣にされてたかも……ですからね」 トトが苦笑する。
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