虹の向こうに~望郷 Vol.3~

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「ま、アホオヤジのフォローは、今に始まったことじゃないですし、疲れてるって言ったって、あんたより若いですからね」 はは、とトトが笑う。 「……けっ。言ってろ。バカ息子」 ヘンリーも笑う。 ヘンリーは運転しているトトの背中を見つめる。 いつのまにか、自分の背丈を越してしまっている。 ――――子供は成長するのが早いぞ。……フィエロ。 かつて、二人の子供達を自分に託し、“オズ”に消えていった親友フィエロ。 ……あれから、10年……か。 ――いつまで、一緒にいられるんだろうな。 10年間、自分なりに“オズ”から二人を守ってきたつもりだ。 しかし、これから先はわからない。 ――このまま、ずっと一緒にいられればいい。こいつと喧嘩しながら、ドロシーと笑いあいながら、エムに小言を言われながら、変わらない日常がずっと続けばいい。 ヘンリーはふっと笑う。 ――感傷だな。 感傷的になるのは、疲れてるからなのか。 ヘンリーは、短くなった煙草を携帯用の灰皿に押し込んで、ゆっくりと目を閉じた……。
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