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車は森の中を進んでいた。
辺りはすっかり暗くなっている。
トトが注意深く、周りを見ながら車を進めていた時――――木々の間から、何かが飛び出してきた。
「――っ!!」
慌てハンドルをきり、急ブレーキを踏む。
「どわっ!!」
ヘンリーがバウンドしながら、座席の下に転げ落ちた。
「いってぇ~。なんだよ!? 急に!?……あたぁ~。鼻、打った……」
顔面をさすりながら、身体を起こしかけた時、後部座席のドアが開く音がした。
「あ?」
間抜けな声を出しながら、ヘンリーが前を向くと、目の前に銃口が突き付けられていた。
「……はい?」
なおも、間抜けな声を出すヘンリー。
「動かないで!」
子供を抱き抱え、薄汚れた女性が、ヘンリーを睨み付け銃を向けていた。
「そのまま……! 黙って、私達をこの近くにある診療所まで案内しなさい!」
女性が、トトに向かってそう言った。
「あ~。え~っと……」
その診療所は、俺んちです。
ヘンリーは心の中で、そう突っ込んだのだった……。
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