虹の向こうに~望郷 Vol.3~

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「あの女だって、それくらいの覚悟はしてるはずです」 「覚悟って……。子供は関係ないでしょう!?」 あまりに情のない言い方に語尾が強くなる。 「……私から言わせれば、子供を巻き込むのが嫌なら、そもそもレジスタンス活動なんかしなければいいだけの話です」 「何か事情があるのかもしれないじゃない!」 「事情があるなら、なおさら覚悟は必要です」 容赦のないエムのその言い方に我慢が出来なくなる。 「……エム、冷たい」 エムは黙っている。 「……さすがっていう感じ?“紅煉のエム”様はいうことが違うよね?」 エムがびくりとする。 感情のこもらない目をこちらに向ける。 言ってはいけないことを言ってしまった。 エムが今、すごく傷ついてるのもわかる。 でも、止まらない。 「みんながエムみたいに覚悟完了ってできるわけじゃないんだからね」 エムが私を見つめる。 「……ドロシー様のいう通りかもしれませんね」 エムがため息をつく。 「……子供を見て来ます。ドロシー様、申し訳ありませんが、ヘンリー様を頼みます」 エムが治療室に向かう。 自己嫌悪が私を襲う。
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