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……あれが……あの男が……ヘンリー博士……。
ベッドの中で、女が空を睨みながら呟く。
“オズ”に優遇される立場にいながら、それを嫌い、“オズ”を捨てた異端の男。
“オズ”に“ウィザード”に対して、意見できる数少ない者。
そして……
“ウィザード”の最大の理解者にして、最大の反逆者――フィエロ=ゲイルの親友……。
女が静かに起き上がる。
……聞いていたのとは、随分違う印象だったわね。
女の目に、妖しげな炎がともる。
ゆらゆらと、全てを焼き尽くすかのように。
……そして、随分上から目線で人を言ってくれたわね。
余裕があるのね……。
くつくつと喉の奥で、女が笑う。
……私には、そんな余裕なんて今までなかった。
夫が死んだあの日から……。
“オズ”に疑われ、“オズ”に殺された夫。
あの日から必死だった。
疑いの目は自身と我が子にも向けられた。
疑いを晴らすために、女はなんでもやった。
気が付いたら、女はレジスタンス達の情報を探る、スパイになっていた。
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