虹の向こうに~エピローグ~

5/8
前へ
/604ページ
次へ
女は捨てられたのだ。 “オズ”にもレジスタンスにも、帰ることは出来ず、怪我をした子供を抱え、女は途方にくれた。 その時、女はある情報屋から聞いた話を思い出す。 異端の男、ヘンリー博士。 彼が、この近くで診療所を営んでいる――と。 ……もしかしたら、彼なら私達を救ってくれるかもしれない。 藁にもすがる思いだった。 あとはもう、無我夢中だった。 偶然、通りがかった車に強引に乗り込んで、診療所まで案内しろと、脅した。 ……それが、当の本人だったなんてね。 しかも、あの村にいただなんて。 数奇な巡り合わせとは、よく言ったものである。 想像していたのとは随分違う、どこか飄々として、つかみどころのない男ではあったが、それでもちゃんと治療はしてくれた。 目が覚めた女は、男とその家族だという少女達にお礼を言おうと廊下に出た。 そして、そこで聞いた言葉――。 “覚悟が足りない” “もっと上手く立ち回れ” “自分の幸せは後にしろ” ――女の中で、何かが壊れた。 心に灯る、青くて冷たい炎……。
/604ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1279人が本棚に入れています
本棚に追加