1279人が本棚に入れています
本棚に追加
そこには、妙齢の美女が立っていた。
「患者さんの前では、お静かに」
「あ、そうね。ごめんなさい」
くるりと女に向き直り、また輝く笑顔をする。
――女は思う。
――この笑顔が、絶望に歪むさまを。
それを考えるだけで、ぞくぞくする。
――歪んだ悦楽。
壊してあげる。
あなたの何もかも。
「ねえ」
少女が女に話しかける。
「名前、教えてくれない?」
「……名前」
「そう。いつまでも、あなたって呼ぶのもおかしいでしょ? 名前、教えて」
……名前。
……私の名前は
“ネッサローズ”
覚えていて。
それは、あなたから全てを奪い去る……魔女の名前。
最初のコメントを投稿しよう!