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フィエロのとった行動が、ヘンリーに影響しないはずはない。
「……ま、全然関係ないって言ったら、嘘だな」
エムの言いたいことがわかったのか、ヘンリーがにっと笑う。
「……でも“オズ”から離れることは、前々から考えてたことだ。……フィエロのことは、その引き金にすぎない。つか、あいつに先を越されちまったってのが正しいかな?」
笑いながらヘンリーが続けた。
ふうっ、と今度はエムがため息をついた。
「……あなたのお気持ちはわかります。ですが、私は納得できません。……私はどうなるんです?」
「……それは、すまないと思ってる。軍医でもある俺の護衛についたばっかりに、お前に中途半端させちまったからな」
よっと言って、ヘンリーは立ち上がった。
そして、子供をあやすようにエムの頭を撫でた。
「でも、お前なら大丈夫さ。すぐに別の仕事が回ってくる。な?“紅煉のエム”」
ヘンリーが、エムの二つ名を呼んだ。
“紅煉のエム”
特務諜報部の中でも、優れていたエムに付けられた二つ名――。
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