閑話休題~その2~

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“オズ”に……“軍”に報告するべきなのだろう。 それが私の勤め。 だが…… ヘンリーはそれを望んでいない。 私自身も望んでいない。 ――戦場では、自分の感情は押さえろ。まして、自分の幸せなど考えるな。 流れなくてよい血が流れることになる。 ……どうしたいの? 私は? 思い悩んだ挙げ句…… 二人はヘンリーが拾った戦災孤児だと報告した。 そのことをヘンリーに告げると、一言だけ“ありがとう”と言われた。 後悔はしていない。 自分の選択は間違ってない。 ――けれど、声が聞こえる。 ――自分の感情を優先し、幸せを求めたお前は、大きな代償をいつか払うだろう、と。 その日は近いのかもしれない。 戦場から逃げ、ヘンリーを脅し子供の治療を求めたあの女――ネッサローズと名乗ったあの女の目に灯る妖しい光。 出会ったときから、嫌な感じがしていた。 脅迫されたからとかではなく、同族嫌悪に近い感情。 ――私はあの女の中に、自分を見たのかもしれない。
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