サザンクロス~プロローグ~

2/17
前へ
/604ページ
次へ
朝日を背にひとつの影が空を行く。 ――GPSじゃ、このあたりにおるはずなんやけどな~。 影はゆっくりとあたりを旋回していく。 ――お。 荒野にぽつんとそびえる岩影に“それ”を発見する。 ――よっしゃ。見つけたで~。 影は旋回しながら、降り立った。 ――呑気な連中やな。“軍”に見つかったら、どないする気や? 岩影には、二人の男が眠っていた。 一人は岩に寄りかかるように眠る男。刀を抱え、膝に眼鏡を置いている。 もう一人は、焚き火の側で眠っている。少し長めの髪が、端正な顔にかかっている。 ――ボディーガードの兄ちゃんとマッチョの兄ちゃんがおらへんな。 影はあたりを見渡した。 ――見張りと偵察ってとこか?……んで。 もう一度ぐるりと見渡す。 ――小娘はそこか。 寝ている二人から少し離れたところに張ってある天幕に、影は近づいていった。 天幕の中で、一人の少女が毛布にくるまり、眠っている。 ――邪魔するで~。 影は少女に近づき、顔を覗きこんだ。 ウェーブがかった栗色の髪。長いまつ毛。
/604ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1279人が本棚に入れています
本棚に追加