サザンクロス~情報屋とコウノトリ~

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無理を強いれば、彼女は俺から離れてしまうかもしれない。 俺はお嬢の側にいたい。 側にいて守りたい。 なぜなら――それだけが俺の存在理由だから。 遥か昔――フィエロ博士が何もなかった俺にくれた“俺の生きる意味”。唯一無二のもの。 なくすわけにはいかない。 「……さて」 気持ちを切り替えるように、トトがエンジンをかける。 「そろそろ出発しないと、予定時間を越えてしまいますね」 ……着いたら、どうやってお嬢を起こそうか? そんなことを考えてクスクスと笑いながら、トトは窓から景色を見た。 「……ああ。また……虹が出てるな」 彼方に見える虹を見つめ、トトは車を発進させた。
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