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「無理だよ」
僕も、強く言い切る。
「この村で、英雄の次に強いのは、英雄の息子だって聞いた」
それでも女の子は食い下がる。
「それは……、この村には若い人が少ないだけだよ」
僕なんかが、強いわけないだろ。
臆病で、逃げてばかりの僕が。
「嘘だ。この家に来るまでに、若い奴をたくさん見た。そのなかには、屈強そうな奴も居た。そいつらにも、聞いたんだ。英雄の次に強いのは誰かって。皆、口を揃えて言ってたぞっ。
“英雄の息子”がそうだって!」
一気にまくし立てて、女の子は少し呼吸が乱れていた。
「僕は強くない。強いわけがない。諦めて、別の人に頼んでよ」
僕以外の誰かに。
臆病じゃない、誰かに。
「……もういい、わかった」
女の子は、わかってくれたようだ。
このまま帰ってくれるかな。
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