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三日前、村の英雄だった父が死んだ。
昔からこの辺りの村々を荒らしている魔獣と戦って。
父の人望は凄かった。なので当然、村の人達はひどく悲しんだ。
ほとんどの村人が望んだが、葬式は行われなかった。
彼の唯一の親族である僕が望まなかったから。
今、たくさんの人に囲まれるのは、辛い。
葬式がなかったかわりに、一昨日から引っ切りなしに家に人が来る。
皆、父にお別れをしたいのだ。
一度に来るのは少人数ずつなので、断らない。少しなら、短時間なら、まだ平気だ。
「こちらへどうぞ」
やって来た一家を、父の部屋へ通す。
中には、生前彼が使っていた剣が机に置いてあるだけだ。
遺体は無い。
家族は、机の前に座り、剣に向かってしばらく手を合わせていた。とても哀しそうな表情で。
僕はその間自分の部屋にこもっていた。
あんな空間には、居たくない。
堪えられない。
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