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十数分ほどして、家族が僕を呼びに来た。お別れが終わったんだろう。
「長居してすみませんでした」
夫の方が言う。
「いえ。来ていただけて父も喜んでいるでしょう」
僕には死人の気持ちなんてわからないけど。
名残惜しそうにする一家を玄関まで送り、僕が戸を閉めようとしたら、
「ヒロ君」
と、奥さんに声をかけられた。
「……なんですか?」
早く一人になりたいんだけどな。
「あのね、お父さんが亡くなって、一人で大変でしょ? 何かあったら、村の人を頼ってね」
優しい口調で、奥さんは言った。
「ありがとうございます」
僕はにこりともせずに軽く頭を下げ、戸を閉めた。
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