訪問者

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誰もいなくなった父の部屋で僕は一人、父の剣の前に座っていた。 見慣れた片刃の長剣。 父さんは、これで村を守っていた。 敵無しだった。 なのに。 僕のせいで。 村の人達が父の死を悲しむのを見ると、僕が責められているような気になる。 お前のせいだ。 お前のせいで。 そんな声が、頭の中で響く。 実際は、村の人達はそんなことを思ってはいないだろう。 優しい人達だから。 これからどうしたらいいんだろう。 村の人達を頼ってもいいのかな。 僕なんかが。 僕のせいで父さんは死んだのに。 「……」 軽く剣の鞘に触れた。 鞘は冷たくて、ただそれだけで、何も答えてはくれなかった。  
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