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「……ふしだらな顔をしている」
「は?なんだって?」
「ふしだらな顔をしていると、そう言ったんだ!」
――あれから、異様なまでに引っ付いてくる女子大生を交わしつつ仕事して、帰り際にあの場に居た同僚達に「リア充」と、良く分からないあだ名で呼ばれ、しきりに背中を叩かれ。心も体も、ボロボロのくったくたになった私を家で出迎えたふしだらな女子高生が言った一言が、先に言った「ふしだらな顔」である。
……どんな顔だよ?ふしだらな顔って?
そう思い、そのまま言葉にして、私をなぜか険しい表情で睨み付けてくる女子高生に問い掛けてみると、女子高生は黙って私の頬を指差し、
「“これ”は何だ?」
そう言い。そのまま指差した指をぐりぐりと、指刺してき痛たたたたたた!
「痛いわ!」
「私はもっと痛いわ!!」
「ええ~?何だその切り返しわ?と言うか、何をそんなに怒っているんだ?」
「まだ分かんないの?じゃあ、洗面所に行って、そのふしだらな顔を自分で見てきたら?ふんっ!」
「だから、そのふしだらな顔って……」
「はりーーっ!!」
「……はいはい」
なんだというのだ?
なぜ、仕事から疲労困憊で帰ってきたというのに、いきなり怒鳴られ、頬を指で刺され、挙げ句。洗面所で疲れて十歳は更に老け込んでいるであろう、自分のくたびれた顔なんかを見なければならんのだ?
そう、思いながらも。私は、女子高生に言われた通りに洗面所に向かい、別に見たところで面白くも何とも無い自分の見慣れた顔を見……た……。
瞬間。
私は、顔面蒼白になった。
――鏡に写った冴えない男の頬に、やったら不似合いな厳かなキスマークが、まるで弁当に貼られた半額シールのように、しっかりとマーキングされていたからである。
私は、全てを理解した。
「……やばいな。コレは」
そう、呟きながら。私はそのまま顔を洗い。今日が厄日である事を再確認しながら、私の言い訳を今か今かと待ち構えているであろう女子高生の待つ、居間へと向かった。
ちなみに、孫は外出中。
大学の飲み会らしい。うらやましい。
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