第1章

7/11
前へ
/151ページ
次へ
  「よし、じゃぁこうしよう。カナちゃん、オカ研に入部するのだ」  そう言うなり、懐から入部届けを取り出す衣音ちゃん。  しかも、私のサインまで書いてある。 「ちょっと、衣音ちゃんいきなり何よ」 「いきなりじゃないのだ。先月から毎日誘っているじゃない。  今日こそはココに拇印を押してもらうわよ」  そう言いながら詰め寄ってくる。 「いや、だからね。その話はまた今度に……」 「今度っていつよ? 毎回そうやってはぐらかされているんだから。いい加減観念しなさい!」  いや、観念して欲しいのは衣音ちゃんの方だよ……。 「よう、また夢野を脅迫しているのか?」  この声……助かった。   「旗門、今いい所なんだから邪魔しないでよ」  衣音ちゃんが不機嫌そうに振り返る。  するとそこには男の子が立っていた。  衣音ちゃんの幼馴染でオカ研唯一の部員でもある西野旗門(にしの きもん)君。  トイガンマニアで、非公開サバイバルゲームのチーム東戦慕(とうせんぼ)にも参加しているらしい。  艶のある黒髪はぼさぼさで迷彩柄のバンダナをしている。  手には必ず指ぬきプロテクトグローブを着けているちょっと変わった人だ。  清潔感を気にする衣音ちゃんと並ぶと残念に見えてしまう男の子。 「た、助かった。助けて西野君」  それでもこんな窮地の時は西野君が天使に見える。 「邪魔しないでよ、旗門」 「良いのかよ、そんなコト言って。  せっかくネタになりそうな話見つけてきたんだがな。  あ~あ、無駄足だったか」  わざとらしく棒読み口調で大声を張り上げる西野君。  お得意の前振りだ。 「ネタ? さすが旗門。で、どんな話?」  この変わり身の早さも彼女の凄いところだ。実際見習いたい面は沢山ある。 「ここ最近、行方不明事件が近辺で多発しているだろ?  それに関してちょっとした情報が手に入ったんだ」  西野君が得意げにメモを読む。  いったい西野君は何処で調べているんだろ?  生態のわからないなぞめいた男の子の上位に位置するよね。  西野君って。
/151ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加